第2回デザインのよもやまばなし「なぜ今デザイン? 〜VUCA時代とデザインの役割〜」

デザインのよもやまばなしでは、「デザインのよもやまメールマガジン」で配信した内容について、図やイメージを使ってより詳しく説明するページとなっています。


こんにちは、産業技術センターデザイン担当の石橋です。

前回は、デザインとは単に色や形を整えるだけではないこと。ビジネスはもちろん人や社会や環境が抱える問題をどうすれば解決できるのか、より良い関係が築けるのかを考えていくこと。また、デザインへの期待が高まってきていることについてお話ししました。

第2回となる今回は、なぜ今デザインが求められているのか?その背景とデザインの役割について説明していきたいと思います。

まずデザインが求められている背景には大きく3つ「世の中の不安定化」、「答えの無価値化」、「価値観の多様化」という時代の変化があります。

 

時代背景その1 「VUCAの時代」

今の時代を表現する言葉に「VUCA(ブーカ)」があります。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、社会、経済、環境のあらゆる面において、変化が激しく複雑で不安定な今の状況を言い表しています。そんなVUCAの時代では、国家間の関係や環境問題、自然災害、疫病などいつどこで何が起こるか、それがどんな影響を及ぼすのか数ヶ月先の未来でさえどうなっているか予測がつかなくなっています。

 

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時代背景その2 「答えの無価値化」

かつて冷蔵庫、洗濯機、テレビが三種の神器と呼ばれた時代には、まだまだ生活の質が低く、食料保存や家事、娯楽などに対してたくさんの問題が存在していました。そして、その問題を解決するための「答え」を誰もが望んでいました。

しかし現代の日本では、衣食住などの基本的な欲求はほぼ満たされており、普段の生活において不便を感じることはほとんど無くなっています。ただ一方で、多くの人が気づいていない無意識下の問題や、幸福感や充足感といったより高次の欲求は無数に存在しており、それらをいかに課題として顕在化させるかが重要になってきています。つまり「答え」の無価値化が進み、「問い(真に解決すべき問題)」の価値が高まってきているのです。

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時代背景その3 「価値の多様化」

それに関連して、便利なことが当たり前になった現代において、あえて不便さや手間を楽しむ価値観というのが受け入れられるようになってきています。例えば、近年のキャンプや釣りといったアウトドアのブームでは、あえて不便で手間のかかるやり方にたくさんのお金と時間が使われています。他にも薪ストーブや家庭菜園なども同じことが言えます。そこには、「利便性」の価値が減り、「意味(情緒やロマン)」の価値が高まってきていることが伺えます。

こういった時代背景の中、これまでのものづくりのやり方が通用しなくなってきているのは皆さんも感じているのではないでしょうか。そこで注目されているのがデザインです。

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デザインの本質 「関係性の構築」

デザインにはある共通の目的があります。それは「関係性の構築」です。例えばテーブルをつくる場合、皆さんは何から考え始めますか?素材からという人もいれば、大きさから、価格からという人もいるかもしれません。デザインでは、まずそのテーブルを誰が使うのかをイメージすることから始めます。「誰」といっても単に年齢や性別だけでなく、身体的特徴や職業、好みやこだわり、性格などひとつのキャラクターが作れるくらい具体的にイメージしていきます。そうすることで単に色や形、素材や使いやすさだけでなく、その人にとって「これがいい!」と感じてもらえるテーブルがデザインできるのです。つまり、デザインが目指すのはテーブルというモノをつくることではなく、人とモノ(テーブル)とのより良い関係性を構築することなのです。

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デザインによってものづくりを行った場合、ターゲットを具体的にイメージしてターゲットとの間に強い関係性を築くことができます。そういった関係性は時代や環境の変化に強く、ファンやリピーターの獲得にも繋げることができます。この関係性の構築こそが、複雑で変化が激しく、価値観が多様化した現代におけるものづくりの大きな鍵になると期待されています。

今回は、今の時代にデザインが求められている理由と、デザインの本質が「関係性の構築」であることについて説明しました。

次回は、デザインって具体的に何をするの?ということでデザインのプロセスについてお伝えしたいと思います。

 

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